朝山芳史氏について、「国民審査で罷免することはできるのか」と疑問に思う人もいるようです。
結論からいうと、朝山芳史氏は最高裁判所裁判官ではなかったため、現役の裁判官だった時代から国民審査の対象ではありません。
最高裁判所裁判官国民審査の対象となるのは、憲法79条に基づく最高裁判所の裁判官だけです。
朝山氏は東京高等裁判所部総括判事などを務めた下級裁判所の裁判官であり、最高裁判所裁判官に任命された経歴は確認できません。
また、2020年5月には裁判官を定年退官しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 朝山氏の退官時の役職 | 東京高裁部総括判事 |
| 最高裁判所裁判官歴 | 確認できない |
| 国民審査の対象 | 対象外 |
| 定年退官 | 2020年5月2日 |
| 上智大学教授 | 2021年4月~2026年3月 |
朝山芳史氏と国民審査の事実関係
国民審査の対象ではない
最高裁判所裁判官国民審査は、日本国憲法79条に定められた制度です。
対象となるのは最高裁判所の裁判官であり、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所などの裁判官は対象ではありません。
| 裁判官 | 国民審査 |
|---|---|
| 最高裁判所長官 | 対象 |
| 最高裁判所判事 | 対象 |
| 高等裁判所長官・判事 | 対象外 |
| 地方裁判所判事 | 対象外 |
| 家庭裁判所判事 | 対象外 |
| 簡易裁判所判事 | 対象外 |
朝山氏は東京高裁部総括判事まで務めていますが、最高裁判所裁判官ではありません。
したがって、退官したこととは別に、現役時代から国民審査の対象ではありませんでした。
最高裁判所裁判官国民審査は、すべての裁判官を対象とする制度ではありません。対象となるのは最高裁判所の裁判官です。
朝山芳史氏の現在
朝山氏は2020年5月2日に東京高裁部総括判事を定年退官しました。
その後、2021年4月から2026年3月まで上智大学法学研究科法曹養成専攻の教授を務めています。
2026年4月5日更新のJ-GLOBALでは、所属機関・部署として「早稲田大学 法学研究科博士後期課程」が掲載されています。
研究分野は刑事法学です。
したがって、2026年9月現在の記事で「現在は上智大学教授」と記載するのは正確ではありません。
詳しい現在の様子については、こちらの現在の活動や経歴をまとめた記事でも紹介しています。
裁判官時代の主な経歴
朝山氏は第33期司法修習を経て、1981年に裁判官へ任官しました。
| 時期 | 主な経歴 |
|---|---|
| 1981年 | 東京地裁判事補 |
| 1983年 | 最高裁刑事局付 |
| 1999年 | 最高裁判所調査官 |
| 2003年 | 大阪地裁部総括判事 |
| 2006年 | 東京地裁部総括判事 |
| 2010年 | 横浜地裁部総括判事 |
| 2013年 | 高知地方・家庭裁判所長 |
| 2015年 | 東京高裁部総括判事 |
| 2020年5月2日 | 定年退官 |
これまでの歩みについては、こちらの主な判例まとめで詳しく解説しています。
朝山芳史氏が関わった主な判決
朝山氏が東京高裁部総括判事だった時期には、社会的に注目された刑事事件の控訴審を複数担当しています。
| 事件 | 東京高裁での判断 | その後 |
|---|---|---|
| 乳腺外科医事件 | 一審無罪を破棄し懲役2年 | 最高裁が破棄差戻し、2025年無罪確定 |
| 浜松5人死傷事件 | 一審懲役8年を破棄し無罪 | 検察が上告せず確定 |
| 東名高速あおり運転事件 | 一審を破棄し横浜地裁へ差戻し | やり直し審などを経て懲役18年確定 |
乳腺外科医事件
乳腺外科医が準強制わいせつ罪に問われた事件では、2019年に東京地裁が無罪を言い渡しました。
その後、朝山氏が裁判長として審理に関わった東京高裁の合議体は一審判決を破棄し、懲役2年としました。
ただし、朝山氏は2020年5月2日に定年退官していたため、同年7月13日の判決言い渡し時には退官済みでした。
2022年2月、最高裁は東京高裁判決を破棄して差し戻しました。
2025年3月の差戻し控訴審では無罪となり、東京高検が上告しなかったため無罪が確定しています。
浜松5人死傷事件
2015年に浜松市で、中国籍女性が運転する車が歩行者に突っ込み、1人が死亡、4人が負傷する事件が発生しました。
被告人は殺人・殺人未遂などの罪に問われ、一審では懲役8年となりました。
2019年、朝山氏が裁判長を務めた東京高裁は、被告人が事件当時、統合失調症の影響によって心神喪失状態だったとして一審判決を破棄し、無罪を言い渡しました。
詳しい判決理由については、こちらの浜松5人死傷事故の解説をチェックしてみてください。
東名高速あおり運転事件
東名高速あおり運転事件の控訴審でも、朝山氏が裁判長を務めました。
一審の横浜地裁は被告人に懲役18年を言い渡していました。
2019年12月、東京高裁は一審判決を破棄して横浜地裁へ差し戻しました。
主に問題となったのは、一審の公判前整理手続で裁判所が示していた見解を公判段階で変更した際、弁護側に十分な主張・立証の機会を与えなかったことです。
東京高裁が危険運転致死傷罪そのものの成立を否定して無罪としたわけではありません。
その後、差戻し審などを経て懲役18年が確定しています。
最高裁判所裁判官国民審査の仕組み
最高裁判所裁判官国民審査の仕組みについてまとめていきます。
対象は最高裁判所裁判官のみ
日本国憲法79条は、最高裁判所裁判官について国民審査を行うことを定めています。
最高裁判所裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民審査を受けます。
その後は、前回の審査から10年を経過した後、初めて行われる衆議院議員総選挙の際に再び審査を受ける仕組みです。
| 項目 | 国民審査の仕組み |
|---|---|
| 対象 | 最高裁判所裁判官 |
| 最初の審査 | 任命後初めての衆議院議員総選挙 |
| その後 | 審査後10年を経過した後、初めての衆院総選挙 |
| 罷免を求める場合 | 氏名欄に「×」を記入 |
| 罷免を求めない場合 | 何も記載しない |
罷免が成立する条件
最高裁判所裁判官国民審査法では、罷免を可とする投票の数が、罷免を可としない投票の数より多い場合、その裁判官は罷免を可とされたものとします。
つまり、罷免を求める「×」の票が罷免を求めない票を上回る必要があります。
これまで国民審査によって罷免された最高裁判所裁判官はいません。
一方、国民審査について、判断材料となる情報の充実や制度の実効性をめぐる議論が国会などで行われた例はあります。
下級裁判所の裁判官には国民審査以外の制度がある
高裁や地裁などの裁判官には最高裁裁判官のような国民審査制度はありません。
ただし、下級裁判所の裁判官に関する制度が存在しないわけではありません。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 任期 | 下級裁判所裁判官の任期は10年 |
| 再任 | 再任可能 |
| 任命 | 最高裁が指名した名簿に基づき内閣が任命 |
| 指名諮問委員会 | 任命・再任候補者の指名の適否を審議 |
| 弾劾制度 | 法定の罷免事由がある場合に適用される制度 |
憲法80条では、下級裁判所裁判官の任期を10年とし、再任できることを定めています。
また、最高裁には「下級裁判所裁判官指名諮問委員会」が設置されています。
同委員会は裁判官、検察官、弁護士、学識経験者で構成され、最高裁の諮問に応じて、下級裁判所裁判官として指名することの適否などを審議します。
ただし、国民が個々の裁判官について直接投票する制度ではありません。
裁判官の弾劾制度
最高裁判所裁判官に限らず、裁判官には弾劾制度があります。
憲法64条に基づき、国会には裁判官弾劾裁判所が設けられています。
裁判官弾劾法2条では、弾劾による罷免事由を次のように定めています。
| 罷免事由 | 裁判官弾劾法 |
|---|---|
| 職務上の義務に著しく違反した | 第2条1号 |
| 職務を甚だしく怠った | 第2条1号 |
| 裁判官としての威信を著しく失うべき非行 | 第2条2号 |
一方、判決内容に納得できないことだけで、直ちに弾劾による罷免事由になるわけではありません。
衆議院の憲法調査資料でも、判決内容など裁判官の判断自体の当否を他の国家機関が調査・判断することは司法権独立との関係で問題となるため、誤判は通常、罷免事由にはならないと整理されています。
国民審査と司法の独立
日本国憲法76条3項は、すべての裁判官がその良心に従って独立して職権を行い、憲法と法律にのみ拘束されると定めています。
また、憲法78条は裁判官の身分を保障し、一定の場合を除いて公の弾劾によらなければ罷免されないとしています。
最高裁判所裁判官については、これとは別に国民審査による罷免制度があります。
| 制度 | 対象 | 目的・仕組み |
|---|---|---|
| 国民審査 | 最高裁判所裁判官 | 国民の投票により罷免の可否を審査 |
| 弾劾裁判 | 裁判官 | 法定の罷免事由について裁判 |
| 分限裁判 | 裁判官 | 心身の故障により職務を執れない場合などを扱う |
| 再任制度 | 下級裁判所裁判官 | 10年の任期後に再任可能 |
これらはそれぞれ別の制度であり、「判決に反対だから国民審査で罷免する」「判決内容が問題だから直ちに弾劾する」という仕組みにはなっていません。
朝山芳史 国民審査に関するQ&A
まとめ:朝山芳史氏は現役時代から国民審査の対象外
| ポイント | 事実 |
|---|---|
| 朝山氏の裁判官歴 | 東京高裁部総括判事など |
| 最高裁判所裁判官歴 | なし |
| 国民審査 | 現役時代から対象外 |
| 定年退官 | 2020年5月2日 |
| 国民審査対象者 | 最高裁判所裁判官 |
| 下級裁判所裁判官の任期 | 10年・再任可能 |
| 弾劾 | 裁判官弾劾法所定の事由がある場合 |
朝山芳史氏は東京高裁部総括判事などを務めましたが、最高裁判所裁判官ではありませんでした。
そのため、2020年に退官したことに関係なく、裁判官在任中から最高裁判所裁判官国民審査の対象ではありませんでした。
最高裁判所裁判官国民審査は憲法79条に基づく制度で、最高裁判所裁判官について国民が罷免の可否を投票する仕組みです。
一方、高裁・地裁などの下級裁判所裁判官については、10年の任期と再任制度、指名諮問委員会、裁判官弾劾制度などが設けられています。
また、個別の判決に対する評価と、裁判官の罷免制度は分けて考える必要があります。
判決に対する不服は、原則として訴訟法上の上訴制度によって争われます。裁判官個人の罷免については、国民審査や弾劾など、それぞれの制度が定める対象と要件があります。

